例年この時期になると、そわそわと心が落ち着かなくなるのは私だけでしょうか。
そうです、初夏の訪れを告げる花菖蒲(ハナショウブ)の季節がやってまいりました。
今回は、茨城県守谷市にある四季の里公園へ、季節の呼吸を追いかけに行ってきましたので、その様子をお届けします。

現地の駐車場に到着し、いざ愛用のデジタル一眼レフカメラを構えようとしたその時、背筋に冷たいものが走りました。
なんと、広角レンズ担当としていつも私の相棒を務めているお気に入りのコンパクトデジタルカメラ(Canon PowerShot SX740 HS)を、自宅に置き忘れてきてしまったのです(一眼レフは持ってきていました)。
カメラバッグのいつものポケットが、ただの虚無空間と化していました。
長年連れ添った相棒を忘れるなんて、痛恨の極みです。
しかし、ここで引き返すわけにはいきません。
幸いにも現代には、驚異的な進化を遂げたスマートフォンのカメラという文明の利器があります。
というわけで、今回はスマホでの撮影を中心に、なんとかこの美しい景色を切り取ることにいたしました。

園内に一歩足を踏み入れると、池の周辺に広がる鮮やかな花菖蒲エリアが目に飛び込んできます。
白、紫、ピンク、そして黄色。
まるで絵の具を溶かしたかのような色とりどりの花々が、水面近くで競うように咲き誇っています。
アヤメ、ハナショウブ、カキツバタを合わせて約46,000株というその圧倒的なボリュームは、まさに圧巻の一言。
思わずスマホを握る手に熱がこもります。

この公園の素晴らしいところは、水の上に整備された木道やデッキを歩きながら、目と鼻の先で花を眺められる点にあります。
微風に揺れる花菖蒲の可憐な姿と、それが静かな水面に鏡のように映り込む光景は、どこか現実離れしていて幻想的です。
スマホのシャッターボタンをタップする指が、まるで独自の意志を持ったかのように止まらなくなってしまいました。

この日の天気は、一面の曇り空でした。カンカン照りの太陽の下も悪くありませんが、花菖蒲やアジサイといったしっとりした花々には、むしろこれくらい落ち着いた光のほうが、その艶やかな色彩を引き立ててくれます。
暑くもなく寒くもない、散策にはちょうど良い心地よい気候で、五感のすべてがリフレッシュされるような感覚に包まれます。

花菖蒲が主役のエリアから少し視線を移し、隣の斜面に目をやると、今度はアジサイたちが咲き始めているのを見つけました。
全体的にはまだまだ固い蕾が多い印象ですが、青や紫の花がちらほらと顔を覗かせており、季節が確実に初夏へと移り変わっている爽やかな空気を感じさせてくれます。

よく観察してみると、ガクアジサイが他の品種に先駆けて先行開花していました。
周囲の蕾たちに対して「お先に失礼!」とでも言いたげに、一足早くその美しいグラデーションを披露してくれています。
あと少しすれば、満開の花菖蒲と、瑞々しいアジサイの見事な競演が楽しめそうですね。

そんなアジサイの斜面をのんびり歩いていると、何やら可愛らしい形を発見しました。
なんと、ハートの形に見えるアジサイです。自然が作り出した偶然のイタズラでしょうか、
なんだか小さな幸せを見つけたような気分になり、心がほっこりと温かくなりました。
私の写真を見た人が、自然と笑顔になってくれたらいいな、そんなことを思いながらシャッターを切りました。

さらに散策を続けると、鮮やかな黄色のキンシバイ(金糸梅)が元気に咲いていました。
その甘い香りに誘われてか、たくさんの蜂たちが忙しそうに飛び回っています。
ブンブンと羽音を響かせながら花から花へと移動する彼らの姿は、まるで熱心に会議でもしているかのよう。
私の隣を歩いていたあるご親子が、その様子をじっと見つめながら「暴走族が走っているね」と話しているのが聞こえてきて、思わず吹き出してしまいました。
ここで少し周囲の様子に目を向けると、微笑ましい光景に出会いました。
あるご家族の様子を眺めていると、お父さんとお母さんの間を元気に走り回っている小さなお子さんがいます。
ここまではよくある光景なのですが、驚いたのはその撮影スタイルです。
なんと、両サイドに分かれたご夫婦が、お互いに立派な一眼レフカメラをがっしりと構え、お子さんの名前を呼び合いながら挟み撃ちにする形で連写しているのです。これには思わずニヤリとしてしまいました。
まるでプロのプレス撮影、あるいは厳重なセキュリティ網のようです。
「右からパシャリ!左からパシャリ!」と、お子さんの一瞬のシャッターチャンスを逃すまいとする熱い親の愛を感じました。
私はこれまで数々の撮影地を巡ってきましたが、このようなダイナミックな挟み込み挟撃撮影法を見たのは初めてです。
家庭内専属カメラマンたちの情熱に、心の中で拍手を送りました。

四季の里公園は、敷地規模こそコンパクトにまとめられていますが、その分動線がすっきりしていて、のんびりと散策するには本当にぴったりの場所です。
園内には子どもたちが遊べる遊具のエリアもあるため、カメラを持った愛好家だけでなく、たくさんのご家族連れや子どもたちの元気な声で賑わっていました。
ここで、実際に訪れる際の実践的なアドバイスを少し。この公園の駐車場は、平日はもちろんのこと、特に週末や見頃の時期の休日は非常に混雑しやすくなっています。
私が訪れた際もなかなかの盛況ぶりでした。
スムーズに車を停めて、人の少ない静かな時間帯に花の呼吸を感じたいのであれば、朝の早い時間帯を狙って到着することをおすすめいたします。
状況によっては臨時駐車場が利用可能になる場合もありますが、早起きは三文の徳、カメラの場所確認も含めて、余裕を持った行動が吉です。

コンパクトデジタルカメラを忘れるという、カメラ好きとしてはあるまじき大失態から始まった今回のお出かけでしたが、結果としては、スマホの性能に助けられつつ、初夏の心地よい風を感じながら花を愛でる穏やかで贅沢な時間を過ごすことができました。
四季の里公園の花菖蒲の本格的な見頃は、おそらく6月中旬頃まで続きそうな気配です。
すぐ後ろにはアジサイの満開ステージも控えていますので、これからのお出かけ先を探している方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
日常の喧騒を忘れ、色鮮やかな初夏の色彩に包まれるひとときは、きっと素敵な思い出になるはずです。
皆さんも、どうぞ素敵な花の季節をお過ごしください。


コメント