あけぼの山農業公園へ、キツネノカミソリを見に行ってきました。
台風15号がなぜか東から西へ向かってくるという、なんとも奇妙な迷走を見せている今日この頃。
朝から空全体がどんよりとした曇り空で、時折パラパラと雨が落ちてくるあいにくの天気でした。
しかし、気温を見てみると驚くほど涼しいのです。
この猛暑続きだった8月において、この涼しさは千載一遇のチャンス。
ここで出かけるのを日和ってしまうと、次に待っているのはお盆明けの容赦ない酷暑と地獄の残暑です。
降水確率と気温を天秤にかけ、完全に気温の低さを優先することに決めました。
奥さんからは案の定、「え、こんな雨が降りそうなのになんでわざわざ出かけるの?」という至極全うなツッコミが入りましたが、そこは涼しさという正義を盾にして出発です。
普段なら早朝に出発して快適なドライブを楽しむのですが、今回は「行くべきか、やめるべきか」と家でウジウジ悩んでいたせいで、完全にスタートが出遅れてしまいました。
見事に朝の渋滞に巻き込まれ、さらに目的地に近づくにつれてドバッと大雨が降り出す始末。
己の優柔不断さを少し反省しました。

あけぼの山農業公園といえば夏はヒマワリが有名ですが、残念ながら8月4日頃に刈り取りが完了した直後でした。
黄色一面の賑やかな景色は終わっていましたが、整地された土の匂いが立ち込め、これはこれで季節の移り変わりを感じさせます。

ありがたいことに、叩きつけるような大雨は小康状態になり、しとしととした小雨に変わってくれました。
ひょうたん池の静かな水面には、優しく落ちる雨粒が幾重にも美しい波紋を描き出しています。
静寂の中に響く水の音を聴いていると、渋滞のイライラもすっと引いていくのがわかります。

今回の主役である「キツネノカミソリ」です。
さくら山の斜面や、ひょうたん池周辺の斜面林といった木漏れ日が差すような場所に、鮮やかなオレンジ色の花が咲き誇っていました。

圧巻の群生というような爆発的な数ではありませんが、緑の背景に浮かび上がるオレンジ色は非常に映えます。
夏の終わりと秋の足音を感じさせてくれる優美な姿で、カメラを構えながら足早にならず、じっくりと歩を進めました。

園内にある「白百合の滝」の斜面でも、キツネノカミソリが自生し、美しく開花していました。
ここでカメラマンとして非常にありがたかったのが、彼らが「大きな木々の下」を好んで咲いているということです。
頭上の枝葉が天然の傘となって雨を遮ってくれるため、小雨程度であれば機材を濡らす心配もなく、落ち着いてシャッターを切ることができました。
天候に左右されにくい撮影環境というのは本当に助かります。

ここで少し、このユニークな名前の由来について理屈っぽく解説してみましょう。
「キツネノカミソリ(狐の剃刀)」というなんとも物物しいネーミングは、実はふたつの観察結果が見事に組み合わさって誕生したものです。
ひとつ目は「葉の形」。
春先に生えてくる細長い線形の葉が、昔の日本剃刀の刃にそっくりであることから「カミソリ」の名がつきました。
ふたつ目は「花の咲き方」。
夏になると春先の葉は一度すべて綺麗に枯れて消えてしまいます。
そして葉がまったくない状態の土から、突如としてオレンジ色の花が茎を伸ばして咲くのです。
この葉のない場所に怪しく浮かび上がる姿が、昔の人々には「狐火」のように見えたこと、また花の色がキツネの毛色を連想させたことから「キツネ」の名が冠されました。
つまり、「キツネの化かし合いのような生態+剃刀のような葉」という、非常に論理的かつ風情のあるネーミングなのです。理由を知ってから改めて観察すると、より愛着が湧いてきます。
ここで、散策中に悲劇が起こります。
前方から、長く伸ばしたリードにつながれた3頭の小型犬を連れた女性が歩いてきました。
そして、あろうことかその女性はスマホ画面に夢中の、いわゆるながらスマホ状態です。
長年の勘で嫌な予感がした私は、少し距離を開けてすれ違おうとしました。
しかしその瞬間、1頭の犬が激しく吠えながら私の足元に飛びかかってきて接触したのです。
突然の出来事に驚き、思わず「うわっ!」と大きな声を上げてしまいました。
通常の散歩であれば、飼い主さんがリードをサッと引くので接触することはありません。
しかし、女性はスマホを操作するのに夢中でリードを引き寄せる余裕などありませんでした。
私の叫び声を聞いてようやく犬を引き、自分の犬に対して怒り出しましたが、被害者である私には一切の声かけもなく、そのまま何事もなかったかのように去っていきました。
謝罪の一言もないその対応には、正直後ろからどついてやろうかと思ったほど腹が立ちましたが、せっかくの撮影の機会です。
怒りの感情でレンズを曇らせるのはもったいないと言い聞かせ、深呼吸をして気を取り直しました。

散策を続け、パークセンター(売店)の隣にあるトライアルガーデンへ移動しました。
ここには「くるくる 虹風の小径」というカラフルで可愛らしい展示が設置されており、静かな花々のエリアとはまた違った華やかさがあります。

本館前の花壇には「ヒマワリをあしらった『白いガゼボ』」が用意されていました。
ヒマワリは開花期間が短いため、見頃を逃してしまった来園者でもいつでも夏らしい写真が撮れるようにと設置されたフォトスポットだそうです。
こういった園側の細やかな工夫や配慮には思わず頭が下がります。

そのすぐ近くには「ミニ風車前のベンチ」もあり、記念撮影をするには絶好のロケーションが整えられていました。

果樹園の南側にある休憩所の池に足を伸ばしてみると、そこでは古代蓮として有名な「大賀蓮(オオガハス)」が綺麗に見頃を迎えていました。
非常に息が長く咲き続けており、優美で大輪の花が雨上がりの空気に実によく映えます。
今回ターゲットにしていたキツネノカミソリですが、開花状況から見てお盆休み明けくらいまでは十分に見頃を楽しめそうです。
木々が多い場所ですので雨天時でも安心して撮影できますが、散策の際はマナーを守って周りに配慮しながら楽しみたいものですね。
風車と緑に囲まれたのどかな空間で、季節の花を眺めながらのんびり過ごす時間は、日頃の慌ただしさを忘れさせてくれる最高のリフレッシュになりました。
キツネノカミソリとハスの両方を堪能できて、ハプニングはありつつも結果的には大満足です。
秋のコスモスもきれいだと聞くので、また違う季節にカメラを持って訪れてみたいと思います。

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