五月のどこまでも青い空を見上げていると、じっとしていられなくなるのがカメラ好きの性というものです。
今日はお天気が抜群に良さそうだったので、光に透ける花びらを想像して、気がつけばカメラを首から下げて家を飛び出していました。
向かった先は、足立区にある青和ばら公園です。
つくばエクスプレスの青井駅から徒歩2〜3分という、驚異的なアクセスの良さを誇るこの公園。
知る人ぞ知る隠れ家的なバラの楽園なのですが、住宅街の中に突如として現れるその景色は、事前の期待値を軽々と超えていきました。

まずは小旅行のスタート地点、つくばエクスプレスの青井駅です。
地上にひょっこり出ると、目の前にはあおいほいくえんがあります。
私の記憶が確かならば、以前この駅前の通路には、それはもう見事なバラが咲き誇っていたはずでした。
しかし、今回ワクワクしながら通路を覗き込んでみると、あれれ、少々のバラがちょこんと咲いているだけではありませんか。
私の記憶のデータが上書きされてしまったのか、それともバラたちがひと足先に照れ隠しで隠れてしまったのか。
いきなり記憶力の限界を試される展開に、思わず苦笑いしてしまいました。気を取り直して、目的の公園へと歩みを進めます。

駅から歩いてすぐ、住宅街の中にその場所はありました。
公園自体はとてもコンパクトにまとまっているのですが、一歩足を踏み入れると空気の密度が変わります。
なんとここには、約100品種、およそ880株ものバラが植えられているのです。
データによっては若干の数の変動があるようですが、目の前に広がる圧倒的な色彩を前にすれば、細かい数字の分析などどうでもよくなってしまいます。
とにかく、右を向いても左を向いても、色とりどりの花々が「よく来たね」と一斉に出迎えてくれるのですから。

公園のデザインがまた絶妙で、私の撮影意欲をこれでもかと刺激してきます。
足元に続く上品な石畳の小道、立体的な空間を演出するドーム型の白いパーゴラ、そして天高く伸びるカナリーヤシ。
これらが実に見事な調和を見せており、下町の住宅街から一瞬にして、ヨーロッパの小さな宮廷庭園に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。
この和と洋のギャップが面白く、ファインダーを覗く目が自然と真剣になっていきました。

訪れたのは5月中旬のまさに今日。
暦の上では春バラの見頃真っ盛り!と言いたいところですが、冷静に観察してみると、季節の針は確実に進んでいるようでした。
いわゆる見頃の終盤戦、といった趣です。
すでに役割を終えて、ハラハラと花弁を落としたものや、端の方が少し茶色く変色してしまったバラも目立っていました。
しかし、それもまた自然の営み。
満開のピークだけが美しさではないと、カメラのレンズ越しに教えられる気がします。

それでも、公園全体のエネルギーは衰えていません。
赤、ピンク、白、黄色、さらには鮮やかなオレンジまで、それぞれの品種が己の個性をこれでもかと主張しながら咲き誇っています。
初夏の強い光を浴びて輝く花びらは、まるで自ら発光しているかのよう。
こうなると、私のシャッターを切る人差し指は完全に制御不能です。
あっちの赤を狙い、こっちの黄色にピントを合わせ、気がつけば夢中でカメラを構え続けていました。

空間の使い方が本当に計算されています。
立体的に誘引されたアーチ状のバラや、歩く人の目線を楽しませる花壇の配置など、どこを切り取っても絵になります。
しばらく立ち尽くして撮影した後は、園内のベンチに腰を下ろしてみました。
ただ静かにバラを見つめ、初夏の風が運んでくるほのかな甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。
それだけで、日頃の雑多な思考がすうっと消えていき、心がじんわりと洗われていくのが分かります。

これだけのクオリティでありながら、ここは大変な穴場スポットです。
有名どころのバラ園のような大混雑とは無縁で、自分のペースでじっくりと花と向き合うことができます。
もし皆さんが訪れるなら、平日の午前中が特におすすめです。
斜めから差し込む柔らかい光を浴びたバラは一段と美しく、静寂の中でより贅沢な時間を過ごせるはずです。

駅からこれほど近い場所で、入場料もかからずにこれだけハイレベルなバラを堪能できるのですから、コストパフォーマンスという観点から見ても最高と言わざるを得ません。
初めて行かれる方へ実用的なアドバイスを少し。
駅の近くには都営住宅を通り抜けるルートがあるのですが、少し道が入り組んでいます。
最新のGoogleマップを起動し、ナビに身を委ねながら歩けば、迷うことなくスムーズに楽園の入り口へ辿り着けますよ。

さて、私が訪れたこの日は、偶然にも地域の一大イベントである青井バラまつりの開催日当日でした。
ただ、お祭りが本格的に始まる時間の前に、私は次の目的地へと移動を開始することにいたしました。
広場の方へと向かうと、まさにこれからお祭りが始まるという熱気の中で、地域の方々が忙しそうに準備を進めていらっしゃいました。
地元のみなさんが集まって、新鮮な野菜の販売やバザー、温かいお茶のサービスなどが行われるそうです。
こうした地域密着型の手作りのぬくもりが感じられるのも、この公園の大きな魅力ですね。
賑やかになる直前の、少しそわそわした空気を感じながら公園を後にしました。
今回、青和ばら公園を訪れて改めて感じたのは、完璧な満開だけが花の美しさではないということです。
少し花弁が落ち、終わりの始まりを迎えたバラたちが見せる儚い表情には、静かな強さがありました。
穏やかな公園の空気、そしてこれから始まるお祭りの小さな賑わい。
そのすべてが愛おしく、カメラを片手にのんびりと過ごす中で、心の中のバッテリーが満タンに充電されたような心地よさを味わいました。
都会の住宅街の中に、このような美しいオアシスが隠されているなんて、本当に贅沢なことです。
今回は春の終盤戦でしたが、バラは秋にも見頃を迎えます。
その頃にはまた違った、深みのある色彩を見せてくれることでしょう。
今から次の秋バラの季節が楽しみでなりません。
ピークを過ぎたからこそ感じられるバラの儚い美しさが好きな方、あるいは周囲を気にせずゆったりと写真撮影に没頭したい方には、これ以上ないほどおすすめの場所です。
皆さんもぜひ、カメラを相棒にして、この隠れた名所に足を運んでみてはいかがでしょうか。
バラたちの囁きが、きっとあなたを自然と笑顔にしてくれますよ。



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