今回は、かねてから撮影リストに入っていた東京都足立区の都市農業公園へ、春の息吹を感じに行ってきました。
実はこの場所、公共交通機関だけでは少しアクセスしづらいイメージがあり、これまで二の足を踏んでいたんです。しかし先日、京浜東北線の東十条駅から徒歩45分程度で行けることを知り、「これは行ってみるしかない!」と、重い腰を上げました。
日暮里駅で京浜東北線に乗り換え、数駅で目的地の東十条駅に到着。改札を出ると、鮮やかな青い帯をまとった京浜東北線の車両が何本も停車していました。「そうか、ここで折り返し運転をしているんだな」と、ちょっとした発見に心の中で頷きます。
駅を出て、ひたすら荒川を目指して歩き始めます。交通量の多い環七をひたすら歩き、ようやく見えてきたのは荒川に架かる鹿浜橋。のんびりと景色を眺めながら歩いたので、ここまで約50分ほどかかりました。でも、心地よい疲労感が、これから出会うであろう美しい景色への期待を高めてくれます。
橋を渡り始めると、遠くに色とりどりのエリアが見えてきました。間違いありません、あれが今日の目的地、チューリップ畑でしょう!
ワクワクしながらさらに進むと、この辺りから都市農業公園の敷地のようです。目に飛び込んできたのは、早くも咲き誇る里桜たちの姿でした。
園内に入ってすぐの場所に、「荒川堤五色桜碑」がひっそりと佇んでいました。実は、私の最も好きな里桜は、ふっくらとした花びらが特徴の「一葉(イチヨウ)」。ソメイヨシノのような華やかさはないけれど、幾重にも重なる淡いピンクの花びらは、ため息が出るほど上品です。ソメイヨシノが散り始める頃、静かに、でも確かに春の終わりを告げるように咲く姿に、いつも心惹かれるのです。
この碑に刻まれた「五色桜」とは、特定の品種の名前ではなく、濃紅色、紅色、淡紅色、白色、黄緑色など、様々な色の里桜が混ざり合って咲く風景を指す言葉だそうです。明治時代には、その美しさが「まるで五色の雲がたなびくよう」と新聞記者に表現されたほどだったとか。当時の情景を想像すると、さらに心がときめきます。
田んぼや畑のエリアに足を踏み入れると、一面に広がる紫色の絨毯が目に飛び込んできました。レンゲの花です!子供の頃、この花で王冠やネックレスを作って遊んだ、懐かしい記憶が蘇ります。一面のレンゲ畑は、どこかノスタルジックな雰囲気で、先ほど見たチューリップの鮮やかさとは異なる、優しい魅力に満ちていました。
レンゲ畑から先ほど見た桜の方向を振り返ると、本当に様々な色の桜が咲き競っているのが分かりました。濃いピンク、淡いピンク、白…それぞれの色が重なり合い、春のパレットを見ているようです。
そして、ひときわ感慨深かったのが「レーガン桜」です。実はこの桜、日本からアメリカに寄贈されたソメイヨシノが、レーガン元大統領夫人によって里帰りしたという、歴史ある桜なのです。遠い異国で咲き誇った日本の桜が、こうして再び故郷の土を踏みしめていることに、不思議な感動を覚えました。
さらに進むと、珍しい緑色の桜、「鬱金(ウコン)桜」を発見!鮮やかな黄色というよりは、黄緑色に近い、独特の色合いをしています。「なぜ『鬱』に『金』なんだろう?」と少し考えてしまいましたが、この花の色合いが、漢方薬のウコンの根の色に似ていることから名付けられたのかもしれませんね。自然界の色の奥深さに、改めて感銘を受けました。
堤防から下の河川敷花壇を見下ろすと、色とりどりのチューリップが、まるで巨大な絵画のように植えられているのが分かりました。
近づいてみると、その鮮やかさに圧倒されます!赤、白、黄色、ピンク…様々な色のチューリップが、風に揺れるたびにキラキラと光を反射し、見ているだけで心が躍ります。「ただのチューリップ畑」なんてとんでもない!一つ一つの花びらの形や色の濃淡が微妙に異なり、じっくり観察するほどに新しい発見があります。
そして、今年のチューリップ花壇のモチーフは、なんと『五色桜大橋』!特徴的な「ダブルデッキ式ニールセンローゼ橋」という構造形式は、世界初なのだそうです。2002年に開通したこの橋が、約3万5千球のチューリップで鮮やかに表現されていました。橋の曲線や構造が、見事に花壇のデザインに落とし込まれており、その創造性に心底驚かされました。
都市農業公園は、今回見た美しい花々だけでなく、広い園内には畑もあり、季節の野菜が育てられています。花を愛でた後は、新鮮な野菜を使った料理を味わうのも良いかもしれませんね。
今回、私は少し距離のある東十条駅から徒歩で訪れましたが、園内は広々としており、時間をかけてゆっくりと散策するのに最適です。ベンチもたくさん設置されているので、お弁当を持参してピクニックを楽しむのも、きっと素敵な時間になるでしょう。
春の色彩と懐かしい風景が広がる都市農業公園。都心に近い場所に、こんなにも豊かな自然が残されていることに感動しました。ぜひ皆さんも足を運んで、心癒されるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか?きっと、素敵な写真と思い出が見つかるはずです。

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